他人の農地を買って転用する場合の売買契約書の書き方

「他人の農地を買って、家を建てたり駐車場にしたりしたい」
この場合、通常の不動産売買とは全く異なる「農地法第5条」という高いハードルを越えなければなりません。
最大の特徴は、「売買契約を結んでも、許可が下りない限り土地は自分のものにならない(名義変更できない)」という点です。
そのため、契約書には特別な特約を盛り込む必要があります。
今回は、農地転用を前提とした売買契約書を書く際の「絶対に外せないポイント」を解説します。


1. 最重要!「停止条件(ていしじょうけん)」を付ける

農地転用の売買契約において、最も重要なのが「停止条件付契約」にすることです。

【文言のイメージ】 「本契約は、農地法第5条の規定に基づく転用許可が得られたときに、その効力を生じるものとする。」

  • なぜ必要か: 万が一、農業委員会から「不許可」が出た場合、この条件がないと「許可が下りないのに、代金を払って農地(農地のまま)を買わなければならない」という悲劇が起こります。
  • メリット: 許可が下りなかった場合、契約は白紙撤回され、支払った手付金なども無利息で返還されるように設定するのが一般的です。

2. 「協力義務」を明文化する

農地転用の申請は、売主と買主が連名で行う必要があります。買主がどれだけやる気でも、売主が協力してくれないと申請すらできません。

  • ポイント: 「売主は、買主が行う農地法第5条の申請手続きに必要な書類を速やかに提供し、実印の押印等、必要な協力を行うものとする」といった条項を入れます。
  • 注意: 印鑑証明書の有効期限切れなどで再発行をお願いすることもあるため、協力的な関係を維持することも大切です。

3. 費用の負担区分を明確にする

農地転用には、様々な「追加費用」が発生します。これらを「誰が払うか」を契約書で決めておかないと、最終局面で揉める原因になります。

  • 農地転用申請の報酬: 一般的には買主負担が多いです。
  • 土地改良区除外決済金: 買主が「抜ける」ために発生するものなので、買主負担が一般的ですが、交渉次第です。
  • 境界測量費: 境界が不明確な場合、売主が「境界を確定させてから渡す(売主負担)」のか、買主が「現状のまま引き受けて測量する(買主負担)」のかを明確にします。

4. 「公簿売買」か「実測売買」か

農地は登記簿上の面積(公簿)と、実際の面積(実測)が大きく異なることがよくあります。

  • 公簿売買: 登記簿の面積で代金を固定する。後で面積が違っても文句なし。
  • 実測売買: 測量した結果、1㎡あたりの単価で代金を清算する。
    • 農地転用では、建築計画のために正確な面積が必要になるため、実測売買を選択することが多いです。

5. 【チェックリスト】契約書に入れるべき項目

項目内容
停止条件農地法第5条の許可が下りるまで契約の効力を発生させない。
許可申請期限いつまでに申請を出すか(売主がいつまでも待たされるのを防ぐため)。
手付金の扱い不許可の際は「手付流し」ではなく「白紙返還」とするのが一般的。
現況引渡し畑の状態のまま渡すのか、更地(工作物撤去)にして渡すのか。
固定資産税引渡し日をもって日割り計算する旨。

まとめ:農地の契約は「許可」がすべて

他人の農地を買う手続きは、「契約書を作る = 許可申請のスタートラインに立つ」という意味です。
契約書に「転用許可を条件とする」という一行が入っていないだけで、数百万円単位のリスクを背負うことになりかねません。
不動産業者が入らない個人間売買の場合は特に注意が必要です。


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行政書士古川俊輔
行政書士古川俊輔
農地転用・開発許可専門の行政書士
埼玉県で地域密着対応
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